顧問弁護士による従業員支援プログラム(EAP)について

顧問弁護士による従業員支援プログラム(EAP)とは

EAPとは、Employee Assistance Programの頭文字をとった略語であり、日本語に訳すと「従業員支援プログラム」です。

顧問弁護士が企業内で、法律問題などで悩んでいる従業員の相談に乗り、従業員の方のメンタルヘルスを改善することによって、健康経営を実現し、もって企業全体の利益を守る活動のことです。悩みを抱える従業員を法的な解決に導くという意味で、従業員の方の法的な側面における産業医としての役割が期待できます。

また、企業様の役員、従業員及びそのご家族などの個人の方のプライベートなご相談について、顧問先企業様の顧問料の範囲内で法律相談を受けることができるため、福利厚生の一環としてご利用いただけ、たとえて言うならば、個人負担のない法人会員のスポーツジムのようなイメージにも近いかもしれません。

従業員支援プログラム(EAP)の導入が勧められる背景について

顧問先企業様の従業員がプライベートで悩み事を抱えていた場合、それだけでも仕事にも集中できないということはよくあります。典型的なものは、相続や離婚、借金問題、交通事故等です。人生にとって一大事の一つでもあります。

もともとは、医師や臨床心理士、カウンセラーなどが相談に乗ったり、外部機関と連携して、必要なメンタルヘルス治療を受けさせたりして、従業員のストレスの憎悪を防ぎ、企業全体の利益を守ることを目的としていましたが、法的トラブルに対しては、医師やカウンセラーでは、相談に乗っても根本的な解決になりません。

このように、法的な問題で悩み、困っている従業員については、医師や臨床心理士では対応が難しいため、まさに、弁護士が従業員の相談に応じ、法的な解決による安心感を与えて、従業員の生活や精神的な安定を図っていくことにより、従業員のパフォーマンスを向上させ、もって企業の運営を盤石化していくことができます。

従業員の立場になって考えると、法的な問題に直面した従業員は、そもそもそのようなことを弁護士に相談してもよいのか、信頼できる情報のない中で自ら弁護士を捜すところから始めなければならないというハードルがあります。また、弁護士に相談すると相談料がかかってしまうということで二の足を踏んでしまい、その結果、事態が悪化してしまうというケースはよくあるところです。

そのような従業員が気軽に相談にいらしていただいて、法的な観点から方向性を指し示すだけでも、仕事に集中して従事することができるようになるなど、従業員のパフォーマンスの向上に寄与することにつながるため、このようなサービスを導入することには大きな意義があります。

従業員支援プログラム(EAP)を導入することのメリット

1 企業全体の生産性の向上

EAPとして法律相談を導入すると、従業員1人1人のメンタルが安定し、仕事に打ち込みやすくなります。また、うつ病などで休業する人も減ることが期待できます。

言うまでもなく、会社の力は従業員1人1人の力の集合です。そこで、1人1人のストレスが減ってパフォーマンスや生産性が上がれば、企業全体の生産性の向上につながります。

2 法令遵守(コンプライアンス経営・健康経営の実現)

現在、一定以上の規模の企業にはストレスチェックや従業員のメンタルヘルス対策が義務づけられています。

しかし、その具体的な方策は必ずしも明確ではありません。特に、離婚や相続、借金問題など、各種の法律トラブルを抱えると、一般的には、大変なストレスを感じ、うつ病などになってしまう方も多いのが現実です。

こうした法律トラブルは早期に解決するとダメージが小さく済みますが、放置すればするほど悪化して深刻な問題に発展する傾向があるため、早期に顧問弁護士にアクセスできることにより、従業員の生活状況が常に安定したものとなり、ストレス要因を小さくすることができます。

このことは、企業に要求されている従業員のメンタルヘルス対策の一環となりますし、それだけではなく、企業に法律上要求される「安全配慮義務」の遵守とも評価されます。   

つまり、従業員支援プログラムを導入すると、企業様が各種の法令を遵守することにつながるのです。コンプライアンスが重視される現代社会では、非常に大きなメリットとなります。

3 従業員のモチベーションアップにつながる

顧問先企業様が支払う顧問料の中で、従業員は個人負担のない形で、弁護士に相談することができるという制度であるため、従業員の個人的な弁護士相談費用を顧問先企業様において負担してくれている事業主の事業の発展にも尽していきたいというモチベーションアップにも繋がることが期待できます。

4 社内におけるトラブルの予防

法的トラブルを抱えていると、本人は非常に気分が滅入るものです。四六時中その問題で頭がいっぱいになり、他のことを考えられなくなるケースもあります。不眠になって仕事のパフォーマンスが落ち、ミスが増えたり人間関係でトラブルを起こしたりすることもあります。

特に、金銭的な面で、深刻なトラブルを抱えていると、たとえば、会社の経理担当者が会社のお金を横領するなどの事件に発展することもあります。

しかし、このようなときに法律の専門家である弁護士に相談して、適切な解決への見通しや今やるべきことを示されると、安心でき、このような社内におけるトラブルに発展することを抑制することができます。

実際に当法人では、顧問先企業様の従業員が借金問題などで困った場合の従業員様の窓口として、当事務所にご連絡をいただけるような制度を構築し、社内での金銭トラブルを防止する仕組みを構築しております。

5 求人における差別化が図れることによる優秀な人材の確保及び定着

米国ではフォーチュントップ500の90%の企業が導入していると言われるEAPですが、日本ではまだ知名度が高くありません。そのような中で、人手不足で悩む業種では、従業員採用時の福利厚生のサービスの中に、顧問弁護士による従業員への無料相談を謳うことによって、他の求人広告との差別化にもなり、より良い人材確保にも資する一方で、採用後の人材の定着にも役立ちます。

従業員支援プログラム(EAP)による法律相談の仕組みについて

顧問先企業様がEAPによる法律相談を導入するとき、どのような仕組みになっていて、従業員が具体的に法律相談をどのようにして利用できるのか、ご説明します。

1 企業と弁護士の契約締結

EAPを導入するときには、まずは当法人と顧問先企業様がEAPの内容を包含する顧問契約を締結します。

契約内容は、弁護士が顧問先企業様の役員、従業員個人及びそのご家族による法律相談に顧問料の範囲内で無料で対応すること、顧問先企業様は弁護士に顧問料を支払うことが骨子となります。そして、企業様はEAPによる弁護士の法律相談制度を導入したことを社内に周知します。

2 従業員による法律相談

法律相談を利用できるのは、顧問先企業様の役員、従業員及びそのご家族です。

離婚や業務上のトラブル、借金問題や交通事故問題などを抱えて弁護士への相談を希望する従業員がいましたら、そのアクセスのしやすさを担保するため、本人が直接弁護士にメールや電話、FAXなどで連絡を入れて、相談内容を送信します(もちろん、会社を通じた相談も可能です)。なお、従業員個人からの直接の相談の場合には、弁護士は、会社には連絡をしません。そして弁護士が相談者に対して直接回答をします。相談だけであれば無料です。

3 従業員の相談だけでは解決できない場合

別途示談交渉や訴訟などの法的な対応が必要になった場合には、従業員の方ご本人と相談の上、費用を払ってもらって手続きを進めていくことも可能です。その際の弁護士費用についても、案件の性質にもよりますが、顧問先の従業員であることを考慮して、若干割引きをすることも可能です。

従業員支援プログラム(EAP)による法律相談サービスの注意点

EAP法律相談サービスを運営にあたっての注意点は以下のとおりです。

1 従業員の個人情報保護、従業員の相談内容の守秘義務について

まずは個人情報保護や守秘義務についての注意点です。

顧問弁護士も弁護士法により、厳しい「守秘義務」が課されています。

つまり、弁護士は、相談者や依頼者からの相談内容を、ご本人の承諾なく、他に話してはならないのです。それは、契約企業や相談料、依頼料を支払う人に対しても同じです。

そこで、従業員からご相談を受けた場合、その相談内容を企業に報告することはできません。企業が求めても開示はできないので、EAPの契約を締結するとき、その点は留意しておく必要があります。

2 利益相反について(顧問先企業様の責任追及をするような相談は受けないこと)

次に、利益相反の問題があります。利益相反とは、弁護士が利益の相反する両者から相談や依頼を受けることです。

弁護士は、弁護士法によって、利益相反の可能性のある事項について、相談を受けたり受任したりすることが許されません。そのようなことをすると、どちらに対しても有効な弁護活動を行うことができないためです。

そこで、弁護士が企業の顧問となっていたりする場合において、従業員が企業への責任追及するための相談をすることなどはできません。

たとえば、従業員が企業の安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求をしたいと考えている場合、残業代請求をしたいと考えている場合などの相談は受けられません。

また、従業員同士のトラブルにおいても利益相反の問題が発生します。利益の相反する両者が相談してくる可能性があるからです。

利益相反の可能性のある相談を受けた場合、弁護士は「利益相反の可能性があるので、回答はできません」というお返事をすることになります。

したがって、顧問先企業様を追及するような相談には乗ることができないため、顧問先企業様において、従業員が弁護士を利用して、会社の法的な責任を追及するのではないかというようなご心配やご懸念は一切ありません。

まとめ

顧問弁護士の活動としてこうした側面を明確に提示している法律事務所は見かけないと思いますが、上記のような多様なメリットのある従業員支援プログラム(EAP)を、企業の福利厚生制度、メンタルヘルス対策の一環として導入する価値は高いといえます。

社業のさらなる発展のために、ぜひご活用いただければと思います。

コンサルティング契約書のリーガルチェックのお困りの方へ 経営を強化するためのコンサルティング契約書リーガルチェックサービス 弁護士法人銀座ファースト法律事務所 コンサルティング契約書のリーガルチェックのお困りの方へ 経営を強化するためのコンサルティング契約書リーガルチェックサービス 弁護士法人銀座ファースト法律事務所 詳しくはこちら
法律相談のご予約はお電話で 平日:9:30~18:00 土日祝:応相談 TEL:03-3538-1011 銀座ファースト法律事務所 法律相談のご予約はお電話で 平日:9:30~18:00 土日祝:応相談 TEL:03-3538-1011 銀座ファースト法律事務所 ご相談の流れ

03-3538-1011

  • 弁護士との顧問契約をご検討の方へ
  • お問い合わせ
  • アクセス