コンプライアンス遵守は企業経営にあたっての鉄則
コンプライアンスとは、法令遵守と訳されることが多いですが、法令遵守にとどまらず、社会規範、倫理規範の遵守まで、幅広く含まれます。その目的は不正やミスに気づき、適切に対処することに尽きます。コンプライアンスの向上は、経営者と従業員がモラルに対する意識を高め、遵守はもちろん不正行為の摘発に積極的に関わることで実現します。
今日では、以前に比べて企業がコンプライアンスを守っているか否かにおいて、社会が厳しく見るようになりました。企業が社会的責任(CSR)をまっとうし、正しいことをして利益を上げているか、不正を働いていないかを社会全体が見ることで、企業が法令違反を起こさないようにさせる効果が期待されています。
経営陣から従業員までが積極的に関わるコンプライアンスの徹底は、教育するだけでは不十分であり、コンプライアンスを重視した経営を行っていくためには内部統制が必要不可欠と言われています。
内部統制の目的とコンプライアンスの関係性
1 内部統制の位置づけ
「内部統制システム」は一般に会社のリスク管理システムを示すものですが、その内容は一義的ではなく、法令上も、会社法上は「株式会社の業務の適正を確保するための必要な体制」(会社法362条4項6号等)と規定される一方で、金融商品取引法上は「当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要な体制」(金融商品取引法24条の4の4)と規定されています。
会社法上求められている内部統制システムは、全ての株式会社を対象としているわけではなく、取締役などが隅々まで業務執行等を監視することが困難とされている大会社や閉め委員会等設置会社に限られています。もっとも、中小企業においても、会社法上大会社等に求められている内部統制システムを参考にして、自社に取り入れるべき内部統制システムを構築していくことが重要です。
内部統制システムは、ある面では、コーポレート・ガバナンスの一環と位置付けられ、他方では、会社に不祥事等が生じた場合の役員の責任に関わるもの、すなわち、コンプライアンス・リスクに関わるものと位置付けられます。
2 内部統制の目的とコンプライアンスの関係性
内部統制とは、目的に応じて組織を整備し、健全に業務を遂行するための仕組みのことです。基本的には以下の4つの目的を達成するために、業務の一部として組織全体で行うものとされています。利益の追求とともにコンプライアンスの徹底が企業の目指す姿であり、内部統制はそのための手段に相当するものと考えられます。
1業務の有効性及び効率性
2財務報告の信頼性
3事業活動に係る法令等の遵守
4資産の保全
出典:「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準のあり方について 」
コンプライアンス違反による経営リスク
まだまだ日本企業においては、コンプライアンスが徹底できておらず、食品偽装問題やSNSへの不正な投稿問題、情報漏洩問題、カルテル問題といったように、様々な不祥事が発生してしまっています。違反の大きさや種類によっては、その企業自体が倒産に追い込まれる可能性もございます。
コンプライアンス違反が発生する要因
・コンプライアンスに関する方針や範囲、ルールが企業で明確に定義・構築されていない。
・コンプライアンスに関して理解している人員が不足している。
・コンプライアンスに関して教育できる人員が不足している。
・モニタリング機能が徹底されていない。
コンプライアンスと内部統制を強化するメリット
・トラブルや問題の隠ぺいがなくなるため、問題解決が早くなり、健全で効率的な経営が実現
・問題発生の局面でも倫理規範に従って対応することで消費者や投資家などに誠実な印象を与える
・労務コンプライアンス遵守が徹底されれば、ハラスメントやサービス残業等がなくなり、働きやすい職場環境を構築できる
・企業価値が高まり、消費者の支持や安定的な投資を呼び込みやすくなる。
・企業の不正行為が抑止されることにより、規制緩和が進み、サービスや商品が多様化する(多様なビジネスモデルが許容される可能性が高まる)。
顧問弁護士の活用法
社内において、コンプライアンスに関して熟知した人員を育成することは、難しく、企業に所属している場合、利益相反の関係になってしまい、コンプライアンスが徹底できないといったケースも少なくありません。
そのような問題を解決する場合には、顧問弁護士をご活用ください。また、コンプライアンスを徹底し、企業の繁栄・防衛を行いたいという場合には、コンプライアンスを熟知しており、コンプライアンスに関する研修の実績のある当法人へご相談いただければと存じます。