裁判所に提起されている訴訟事件の中でも、大多数を占めるのが「損害賠償請求事件」と言われております。それだけ、よく紛争としてありうる損害賠償の請求ですが、これらの請求は、典型的には相手方に「債務不履行」や「不法行為」があった場合にすることができます。
一般的な損害賠償請求の段階的な推移
1 任意での賠償交渉
債権者(お金を請求する権利がある者)から、電話、メール、手紙などの方法で「賠償してほしい」という請求を債務者(お金を支払う義務を負う者)は受けます。
2 弁護士による内容証明郵便の到達
前述した債権者・債務者間の請求でも賠償がなければ、弁護士を通じた形で内容証明郵便が郵送されてきます。内容証明郵便を送付することで、いつ、どのような請求をしたのかが明確になり、債権者には「請求した」という証拠が残ります。
3 裁判所からの通知
裁判所から「損害賠償請求の訴えを受けた」という事実が通知されます。
裁判所から債務者に対して通知されているということで、債権者が裁判所に訴訟を提起したことが分かります。裁判所からの通知には「答弁書」が同封されています。
やむを得ない事情があればその旨を、反論があればその内容を整理して答弁書に記載し返送する必要があります。
ところが、これを無視して答弁書を返送せず、さらに指定された期日も無視して裁判所に出頭しなかった場合は、原告(債権者)の請求及び主張がすべて認められてしまうおそれがあります。
裁判所の判決を得た債権者は、強制執行の申し立てによって債権の回収を図りえます。
強制執行を受けてしまえば、預貯金などの財産や給与の差し押さえを受けるリスクを背負ってしまいます。
以上のような事情を鑑みれば、裁判所の通知や呼び出しを無視すると自分自身が不利益を受けてしまうので、対処が必要となることを理解する必要があります。
損害賠償請求に対する対処方法
請求に理由がないと考える場合の対処方法
(1)正当な方法で反論する
任意での請求や弁護士による内奥証明であれば、理由がないことを明らかにする旨の書面等で返信しておくことが有用です。
損害賠償請求に対する反論は概ね以下の4点に収斂されることが多いです。
① 請求の原因となる不法行為をしていない
② 過失がない
③ 損害が発生していない
④ 行為と損害との間の因果関係がない
特に重要なのは、正式な裁判所からの通知であれば、上記のとおり、通知を無視して、裁判期日にも出頭しないと、請求に理由がないと考えていても、請求が認められて、不利益を受けるおそれがあります。たとえ架空の事実に基づいた損害賠償請求であっても最終的に支払いの義務が生じかねません。
裁判所からの通知を受けたら、答弁書に「心あたりがない」という趣旨の内容を書いて返送し、反論しましょう。
(2)弁護士に相談する
損害賠償請求に理由がないときであっても、すぐに弁護士に相談することは有益です。
法律の専門家である弁護士なら、相手の賠償請求が正当なものなのか、どのような内容で答弁書を作成するべきなのかなどのアドバイスが得られます。また、訴訟対応のすべてを弁護士に任せることも可能です。こちらは、まったく理由ががないと思っている請求でも、相手にとっては「正当な請求だ」と主張できる材料があるのかもしれません。
証拠の出し方やタイミング、反論の方法によっては、相手の主張が認められてしまい支払いの判決が下されてしまうおそれがあります。
請求に理由がないと考えているものであっても、足元をすくわれないように、法律の専門家に毅然(きぜん)とした対応をとってもらうようにすることが有益だと考えられます。
請求に理由があると思われるときの対処方法
損害賠償請求に何らかの理由があると思われる場合であっても、すべて受け入れるのではなく、最善を尽くすことをおすすめします。
(1)交渉の余地があるのかを検討(減額・支払猶予・時効など)
請求に理由がある場合でも、その請求全額に全て理由があるとまでいえることは多くはありません。請求されている損害額が過大であったり、相手方にも過失がある場合には、過失相殺で減額を求めてみたり、支払の猶予を求めることで負担が軽減できる可能性があります。さらには、損害賠償債権が時効にかかっていれば、全額の支払いを免れることができる可能性すらあります。
(2)弁護士に相談する
たとえ、請求に理由があるであっても、相手の請求を鵜呑みにするのは得策ではありません。とはいえ、減額や猶予を求めても容易に相手が納得するとは考えにくいので、まずは弁護士への法律相談がおすすめです。
弁護士に相談すれば、減額交渉や猶予を求める材料がないか、反論によって支払いの回避が期待できるかといった点についてアドバイスが得られます。
さらに、実際に弁護士と契約し、相手への対応や訴訟の手続きをすべて任せれば、答弁書や準備書面の作成を代行してくれますし、必要な事実を立証し、主張を展開してくれますので、賠償責任の範囲や金額を抑えることが期待できます。
特に、損害賠償請求事案の裁判では、裁判所による和解の勧告などにより、一般的に和解でまとまることが多く、和解自体が相互の互譲をもとに成り立つものですので、請求者側において何らかの落ち度があれば、請求額全額が認められることを回避することができるケースも多くあります。
まとめ
損害賠償請求を受けてしまったら、まずは弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談すれば、請求に心あたりがある場合も、あるいはない場合でも、どのように対処すべきかについて適切なアドバイスが受けられます。
特に、顧問弁護士などが要る場合には、契約段階から、チェックしてもらっていることが多く、請求に理由があるのかないのか、理由があっても、相手方への反論方法等を的確にアドバイスすることもできますし、相手への対応や訴訟の手続きを一任すれば、賠償金の減額や支払いの猶予が得られる可能性もより高くなります。
当法人では、数多くの損害賠償請求トラブルを解決してきた実績をもつ弁護士が、請求の正当性や交渉の余地があるのかを判断して、最適な対処法を提案します。