解雇



解雇とは

解雇とは、使用者による一方的な労働契約の解約のことですが、現在の日本の労働法制では、労働者を解雇するのは難しいといえます。仕事ができない社員や勤務態度が悪い社員であっても、直ちに安易に解雇をすることはできません。解雇には、①懲戒処分としての懲戒過去②それ以外の普通解雇があります。普通解雇のうち、経営以上の都合で労働者を解雇する措置を講学上、整理解雇といいます。

不当解雇のリスク

安易に解雇をしてしまうと、従業員から解雇が無効であると訴えられたり、無効であることを前提にその期間の賃金を支払うように要求されることがあります。

裁判などで、解雇に正当な理由がなく、無効と判断された場合、被解雇者との雇用契約は解雇通告後もそのまま継続しているということになるのです。

よって、後々、被解雇者が会社に対し解雇の無効を主張して訴えた場合、解雇されなければ得られたであろう賃金を支払う義務が生じたり、被解雇者の職場復帰を命じられたりするおそれがあります。その際には、被解雇者が、会社に一方的に不当に解雇されたなどと声高に主張されたりして、会社内の雰囲気や士気も芳しくないものになるおそれがあります。何よりも、1年前に解雇したにもかかわらず、突然1年分の賃金を一度に支払わなければならないという事態になる可能性もあるため、安易な解雇は、会社にとって、経営上の重大なリスクになりえます。

解雇時点では被解雇者が何も文句を言わず穏便に解雇できると思われる状況があっても、当該被解雇者がその後再就職で困難な状況に直面するなどして、やはり解雇は無効であるなどと争ってくるおそれがあるため、注意が必要となります。

解雇が認められないケース

1 解雇権の濫用と評価されるケース

解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇権を濫用したものとして無効とされます(労働基準法第18条2項)。

すなわち、解雇が有効とされるためには、解雇権の濫用とされないだけの正当な理由、合理的理由が必要なのです。

2 法律による解雇の制限

①時期の制限

・労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり療養のため休業する期間及びその後30日間(労働基準法第19条1項)
・女性が産前6週間、産後8週間の休みをとっている期間及びその後30日間(労働基準法第19条1項、第65条)

 

②差別的な理由に基づく解雇

・国籍・信条・社会的身分を理由とした解雇(労働基準法第3条)
・女性であることを理由とする解雇(雇用機会均等法第8条1項)
・婚姻・妊娠・出産を理由とする解雇(同2,3項)
・労働基準法に基づき産前6週間、産後8週間の休業をしたことを理由とする解雇(同3項)

 

③労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、またはこれを結成しようとしたこと、正当な組合活動をしたことを理由とする解雇(労働組合法第7条1号、4号)

3 就業規則・労働協約による制限

解雇事由は、終業基礎育・労働協約において定められるのが一般的であり、これらに解雇する場合の手続条項が定められている場合、当該手続きを踏まないで行われた解雇は無効と考えられています。

解雇が有効とされうるケース

1 解雇権の濫用とされないだけの客観的、合理的理由が存在する場合

そこで、解雇する前には、当該事案が正当な理由があると認められる場合にあたるのかを十分に調査する場合があります。 以下、解雇が有効とされうる参考例をご紹介します。

 

(1)社員の入院

数週間の入院で病気自体が治療可能な場合、解雇は原則認められないでしょう。
職場への復帰に予測できない程度の長期間を要するような場合には、労務提供が不能であるとして解雇しうると考えられます。

また、多くの就業規則には解雇事由として「病気により●日間休業したとき」と定められている場合が多いと思いますが、その場合には定められた期間より短期間で解雇することは原則認められません。なお、前記のとおり、病気の社員を解雇する際には、労働基準法19条1項により、「労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり療養のため休業する期間及びその後30日間」においては、解雇ができないことになっているのでも留意する必要があります。

 

(2)勤務態度や勤務状況の不良

ただ勤務態度や勤務状況が悪いだけでは解雇は認められず、解雇がやむを得ないと考えられる正当な理由が必要となります。

やむを得ないと考えられる正当な理由としては、勤務態度や勤務状況の悪さの程度が甚だしいこと、本人に帰責されるものであること、解雇以外の方法・方策を尽くしたこと(例えば、勤務態度の悪い社員に対して処分を行う際には最初から懲戒解雇を行うというのではなく、個別の注意、戒告・訓戒などの解雇以外の懲戒処分、それでも改まらない場合には諭旨解雇を試み、それも困難な場合に最終手段として懲戒解雇を考えるというステップを踏む)などの事情が必要となってくるものと考えられます。

 

(3)労働能力の欠如

当該社員につき一定の労働能力を有していることを想定して採用したものの実際の労働能力は著しく欠如していたような場合、その程度によっては解雇しうると考えられます。

もっとも、このような理由で解雇するためには、使用者としては直ちに解雇するのではなく、当該不十分な点を忠告し、労働能力向上のための援助をしたうえでなお是正されない場合に初めて解雇を行うという配慮が必要であると考えられます。

 

(4)経歴詐称

重大な経歴詐称があった場合には解雇しうると考えられます。

もっとも、全ての場合に解雇できるわけではありません。具体的には、以下の点などを考慮し、経歴詐称行為が重大な信義則違反にあたる場合には解雇も許されるものと考えられます。

・就業規則に経歴詐称を解雇事由とする旨の有無
・経歴を詐称した態様
・意識的に詐称されたものであるか
・詐称された経歴の重要性の程度
・詐称部分と企業・詐称者が従事している業務内容との関連性
・使用者の提示していた求人条件に触れるものであるか
・使用者が労働契約締結前に真実の経歴を知っていれば採用していなかったと考えられるか

2 経済情勢悪化等を理由としてやむを得ず解雇をする場合(整理解雇)

新型コロナウイルス感染症の影響で、業績が悪化し、やむを得ず人員整理をしなければならなくなったという相談が多くなっております。そのような経営上の事情で従業員を解雇する場合でも、容易に正当な解雇として認められるわけではなく、整理解雇として有効となるための要件(判例上、①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人員選定の合理性、④手続の相当性という4つの要件)を満たす必要がありますので、注意が必要です。

3 小括

解雇が認められるか認められないかは、事案によって千差万別でもあるため、それぞれのケースに応じて、顧問弁護士に相談されて、解雇に踏み切るか否かについて、慎重な判断をする必要があります。

解雇リスクの回避

解雇については、上記のような客観的・合理的な理由が必要とされますが、それが認められるかどうかというところは、大きな問題となります。解雇リスクを回避するためには、合意退職に持ち込むことが最も良い手段だといえます。

まずは、指導・教育の実施や見直しを行い、企業として、努力をしたこと証明する必要があります。また、その際には、指導、教育の証拠を書面として残してください。

そして、指導、教育の結果、どのように能力のない従業員が変わったのか、これも書面として記録を残してください。次に、配転を行います。こちらも、環境を変える努力をしたという証拠を書面として残してください。最後に、退職勧奨を行い、降格、降給を実施しましょう。それらを実施し、本人が納得した場合には、合意書を必ず作成しておき、かつ面談を行う場合には、変な言いがかりをつけられないように、二名で面談を行いましょう。

解雇の手続きについて

上記のような合意退職にできず、どうしても解雇する場合には、解雇する従業員に対し、少なくとも30日前に解雇の予告をする必要があり、解雇の予告を行わない場合は、解雇と同時に30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払わなければなりません。

予告から解雇までの日数が30日に満たない場合は、その不足日数分の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があります。

ただし、従業員に非があり懲戒解雇を行うケースでは、所轄労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けることで、解雇予告手当を支払う必要がなくなる場合もあります。

※パート社員・アルバイト社員の解雇
パート社員・アルバイト社員の場合、雇用契約が有期のケースが多いですが、有期の雇用契約の場合、労働契約法第17条により解雇が制限されます。有期労働契約については、使用者と労働者が合意して契約期間を定めているため、使用者はやむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間の途中で労働者を解雇することはできないこととされているのです。

この「やむを得ない事由」があるかどうかは、期間の定めのない労働契約の場合の解雇の正当性に比べ、より厳しく判断されます。

よって、正社員だけではなく、パート社員・アルバイト社員の解雇でも、注意をして進めていく必要があります。

顧問弁護士の活用法

解雇の手段をとる場合でも、顧問弁護士に事前に相談することで、各事案に合わせて、①まず解雇の理由が客観的に合理的であるといえるものであるか、②解雇手続はどのような流れで行えばよいか、③解雇後に紛争とならないためにはどのような点に気をつければよいか等を法的観点よりアドバイスをすることができます。

また、万が一にも、解雇された社員が、不当解雇であるとして従業員としての地位の確認や賃金や損害賠償の請求を行ってきた場合には、企業様に代わって、訴訟代理人として、御社の対処が適切であったことを全面的に主張し、御社の受ける不利益が少なくなるよう最大限の対応にあたります。

当法人では、使用者側による解雇の有効性を主張する立場で事案を多く経験しており、解雇の手続きの場面で的確かつ有効なご提案をすることができます。

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