団体交渉・労働組合対策

 

「勤務態度の悪い従業員を解雇したところ、労働組合から団体交渉を申し入れられた」
「うつ病で満足に仕事ができない従業員に退職勧告を出したところ、不当解雇だと言われている」
「知らない間に社内に労働組合ができ、団体交渉を申し込まれた」

■労働組合の種類

労働組合には、その構成の態様から、概念上、以下のように分類ができます。

1 職業別労働組合

同一職業の労働者が自分達の技能に関わる利益を擁護すべく広い地域で組織する労働組合

2 産業別労働組合

同一産業に従事する労働者が直接加入する大規模な横断的な労働組合

3 一般労働組合

職種、産業のいかんを問わず、広い地域にわたって労働者を組織する労働組合です。

4 企業別組合

特定の企業または事業所に働く労働者を職種の別なく組織した労働組合

5 地域一般労組(合同労組)

企業別組合に組織されにくい労働者を一定地域で企業を越えて組織する形態の労働組合
合同労組は、基本的には「誰でも入れる労働組合」であり、企業別の労働組合とは異なるため、これと区別するために、通常は合同労組やユニオンなどと呼ばれています。

合同労組(ユニオン)からの請求における留意点

団体交渉には社内の労働組合から申し込まれる場合と社外の合同労組(ユニオン)から申し込まれる場合とがあります。

社内の労働組合であれば、その組織構成なども分かりますが、地域一般労組(合同労組)では、企業外で組織されているという点で、その労働組合がどのようなものかもわからず、どう対応してよいのか頭を悩ませる事態となってしまい、トラブルに発展するケースが多いところです。

ユニオンは、日常的に、解雇など個別的労使紛争を主に取り扱っており、使用者より労働法を熟知しているケースが多く、何も対策を立てずに交渉に臨んでしまうことで、相手に主導権を握られ、全面的に労働者側の主張を受け入れなくてはならない状況に陥りかねません。

以下では、ユニオン対応においてやってはいけないことを挙げたいと思います。

(1)上部団体の役員の出席を拒否してしまうこと

団体交渉の議題は、会社と会社従業員の間の労働条件などですので、会社担当者の方は、会社とは何ら関係のない労働組合の上部団体の人間と協議する必要はないと考える傾向にあります。しかしながら、労働組合法上、使用者は、上部団体の団体交渉の申し入れには応じなければならないとしており、支部と会社との団体交渉であっても、上部団体の役員の参加を拒めないとされています。

したがって、上部団体の役員の団体交渉への参加を拒否することなく、団体交渉を行う必要があります。

(2)社内の施設や労働組合事務所を使用して団体交渉を行ってしまうこと

労働組合は、社内の施設や労働組合事務所(本部の事務所)を使用して団体交渉を行おうとします。団体交渉は、会社施設や労働組合事務所で開催する必要はありません。団体交渉を会社施設や労働組合事務所で行うことで、そのままなし崩し的に、次回から組合活動に会社施設を使用しても良いことにつながったり、団体交渉に無用の混乱をもたらすことになります。

(3)就業時間中に団体交渉を開催してしまうこと

労働組合が、就業時間中に団体交渉を開催するよう要求してくることがあります。、これを認めてしまうと、仕事を中断して団体交渉を開催することになり、後に、団体交渉開催中の賃金を支払うべきか否かが問題となります。使用者は、従業員や団体交渉や労働組合活動に費やした時間に対して賃金を支払う必要はありません。

(4)労働組合全員が誰であるかわかるまで団体交渉を行わないという対応をとってしまうこと

労働組合結成直後は、誰が労働組合員なのか不明である場合があります。

会社が、誰が労働組合に加入したのかどうしても気になるので、労働組合に対し、組合名簿を提出しなさいということがあります。それだけならまだいいのですが、会社によっては、どの従業員が労働組合に加入したかわかるまで団体交渉には応じないということもあります。

労働組合は、必ずしも労働組合員が誰であるかを明らかにする義務を負いません。

労働組合全員が誰であるかわかるまで団体交渉を行わないと、団体交渉拒否として不当労働行為となるおそれが強いため、労働組合全員が誰であるかわからなくとも、まずは団体交渉に応じる必要があります。

なお、労働組合員が誰であるかは、当初はわからなくとも、団体交渉の出席者などから時間が経つと共にわかることが多いので、結成当初はあまり神経質になるべきではありません。

(5)団体交渉期間に労働組合が用意してきた書類にサインしてしまうこと

労働組合によっては、団体交渉終了後に、議事録と称した書類に会社出席者のサインを求めることがあります。会社担当者が、議事録であればよしとして、サインしてしまうことがあります。しかし、議事録でも覚書でも文書の名称は何であれ、労働協約の様式を備えてしまえば、その文書が労働協約としての効力を有することがあります。団体交渉終了後で頭に血が上っていたり、組合の圧力に押されていた場合は、通常であれば同意しない文書にサインしてしまうものです。

また、労働組合は、当然のことながら自分に有利なように文書を用意していますので、かなり気をつけてサインしないと会社に不利益を与えてしまいます。

したがって、まずはどのような文書であっても、検討の上、対応するといって、一旦は持ち帰り、団体交渉の場ではサインしないようにしましょう。

(6)組合の要求をのまないと不当労働行為になると思ってしまうこと

労働組合法は、使用者に対し、団体交渉に応じ、誠実に交渉する義務を課しています。労働組合の要求をのまないと不当労働行為になってしまうと勘違いしてしまう方もいます。もちろん、会社は、組合の要求に対して、会社の主張を裏付ける資料を提出したり、具体的な事実を説明する必要があります。

しかし、それ以上に、会社が労働組合のいうことをそのまま受け入れないと不当労働行為になってしまうというわけではありません。会社が受け入れることのできない労働組合の要求であれば、具体的な資料や論拠にもとづいて説明した上で、要求を拒否してもかまいません。

(7)労働組合結成後、組合員に組合員に組合を辞めるように説得してしまうこと

労働組合結成直後、会社が、労働組合員に対し、労働組合をやめるよう説得してしまうことがあります。もちろん、このような行為は、労働組合の運営に介入するものであり、支配介入行為として禁止されています。

労働組合員は、色々考えた上で労働組合に加入しているわけですから、会社が労働組合をやめろといって、わかりました、組合から脱退しますと言って、労働組合をやめることはありません。むしろ、このような発言を行うことで、労働組合が会社を攻撃する材料を与えてしまうことになります。

(8)関係会社の問題なのに親会社が団体交渉に参加してしまうこと

比較的規模の大きな会社であれば、多数の関係会社を有していると思います。その結果、親会社本体ではなく、関係会社の従業員が合同労組に駆け込むことがあります。合同労組は、このような場合、従業員が勤務している関係会社だけではなく、親会社に対しても団体交渉を要求することが多々あります。合同労組と関係会社の従業員との問題ですから、親会社は全く関係のないはずです。にもかかわらず、合同労組によっては、執拗に親会社に対し団体交渉拒否であると述べるところもあり、会社によっては、これに応じてしまうところもあります。一度団体交渉に応じれば、その後は団体交渉に応じざるを得なくなります。法的には、関係会社と親会社が一定以上の密接な関係にあれば、団体交渉応諾義務があるといわれていますが、まずは親会社は団体交渉には出るべきではありません。

(9)掲示板の貸与や就業時間中の組合活動を認めないと不当労働行為になると思ってしまうこと

複数の従業員が組合を結成した場合、労働組合は、便宜供与を求めることがあります。労働組合法第7条3号は、不当労働行為の一類型とし「労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること」を禁止しています。

使用者が労働組合の活動を援助することは原則として違法なのです。もっとも、第7条3号但し書きは必要最小限の広さの事務所の供与をすることを許していますが、これも必要最小限の広さの事務所を供与することを許すにすぎません。

また、会社は、施設管理権といって、建物や設備を会社の裁量のもとに管理する権利を有しています。したがって、会社は、施設管理権にもとづいて、組合に掲示板を貸与しないこともできるのです。

就業時間中の組合活動については、従業員は、就業時間中は職務に専念する義務がありますので、会社がその義務を履行することを求め、就業時間中の組合活動を禁止することは原則として自由です。 会社の施設や人員に余裕がないのであれば、そのことを具体的に説明して便宜供与を断っても何ら不当労働行為にはあたりません。

(10)訴訟中であることを理由に団体交渉を拒否してしまうこと

従業員が合同労組に加入し、団体交渉を続けても、会社と合同労組が合意に至らない場合が多々あります。合同労組の中には、団体交渉で解決が図れないと判断した場合、労働審判を申し立てるなどの法的手続きを取るものがあります。

もっとも、法的手続きをとったとしても、合同労組の中には、訴訟や労働審判と平行して団体交渉を申し入れるものもあります。この場合、往々にして、会社の担当者の方が、労働審判などの訴訟で争っているのであるから、重ねて団体交渉を開催する必要はないということがあります。

訴訟が現在進行しているからといって、団体交渉を拒否することはできません。もっとも、議題は現在進行している訴訟と対象が重複する可能性が高いことから、団体交渉では、組合の要求、質問に対して、訴訟で主張している内容を改めて述べざるを得ないところです。

顧問弁護士の活用法

顧問弁護士に依頼をしていただくことで、労働組合との交渉や労働協約に関する書類の作成、労働者との条件調整などを代理で行うことができます。訴えを起こされた後の対応はもちろんのこと、労働組合から団体交渉をされないために、就業規則の整備や労働環境の調整などについてもアドバイスをさせていただきます。

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