メンタルヘルス・ハラスメント対応

第1 はじめに

メンタルヘルス不調とは、精神疾患のみならず、心身症や出勤困難、職場での人間関係上のストレスや仕事上のトラブルの多発、多量飲酒などを含めた心の不健康状態を総称する用語です。

業務上の原因の結果、メンタルヘルス不調が起こった場合、労災認定されたり(、以下に述べる安全配慮義務違反を理由として損害賠償を起こされる可能性があります。

精神疾患から自殺にまで至るケースも少なくなく、巨額の損害賠償請求を起こされる可能性があるため、経営上重大なリスクと言えます。

第2 使用者側のメンタルヘルスに対する対応義務 ~安全配慮義務~

労働契約の一方当事者である使用者は、労働者に対して、労働契約上の安全配慮義務(=労働者がその生命・身体等の安全を確保しつつ、労働することのできるよう、必要な配慮をする義務)を負っています。

そのため、使用者としては、労働がメンタルヘルスに陥らないように、予防したり、早期発見、早期対応や、復職の支援や治療の協力も安全配慮義務の一環として行う必要があるとされています。

第3 発生の予防対策

厚生労働省のメンタルヘルス指針に沿った対応

厚生労働省は、労働安全衛生法70条の2第1項の規定に基づき、同法69条1項の労働者の健康の保持増進を図るために必要な措置の適切かつ有効な実施を図るための指針として、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(メンタルヘルス指針)を定め、職場におけるメンタルヘルス対策を推進しています。

企業としては、この指針に基づき、メンタルヘルスケアの教育研修・情報提供、職場環境等の把握と改善、ストレスチェックの実施などをすることで、メンタルヘルス不調への気付きと対応を職場内において整えることが重要となります。

専門医への受診命令

メンタルヘルスの不調が懸念される労働者が出た場合には、状況に適した専門医(精神科医)の受診をさせることが重要と考えられます。

労働者側は、自らの主治医に診断をして、労働者の希望に沿う診断書を提出してくることがありますが、会社として信頼できる精神科医の診断を受けさせることが適切な労働者の病状把握に資するものと考えられます。この場合、就業規則に、会社による受診命令や受診医師が指定できる形としておくのが大切といえます。

第4 メンタルヘルス不調者への対応

休職制度の利用

メンタルヘルス不調に陥った人に対しては、いきなり会社を辞めさせるということは控えて、休職制度を利用することが重要といえます。

休職制度の内容は、就業規則に定めることとなりますが、休職事由、休職期間、休職開始手続、休職期間中の責務、休職期間満了の取扱い等について決めることとなります。

労働者が業務上の原因が認められる怪我や病気により、休業又は休職した場合は、その休業中及び復職後30日間の解雇が原則として制限されており(労働基準法19条1項)、労災認定や休業補償等の対象となります。

なお、業務外の傷病(私傷病)により休職した場合には、休職期間満了時までに復職できなければ、解雇か退職となり、休職期間中の賃金も無給であることが多いところです。

復職可否の判断

厚生労働省が発行している「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を踏まえて判断していくことが有用とされています。

休職期間満了時に復職可能か否かについて、労働者と使用者との間で紛争になることがよくあります。

労働者が復職可能という主治医の診断書を提出して復職を希望してくるケースが多いですが、企業としては、労働者の提出する主治医の診断書のみで復職を認めなければならないわけではありません。これは、主治医の判断は、労働環境を十分に理解しないままに書かれていたり、労働者本人やその家族などの意見が反映されていたりすることがあるからです。

そこで、使用者は、労働者から復職可能との診断書を提出されて、復職を希望された場合は、主治医との面談や情報提供の要請をして、診断書の内容を確認したり、産業医と労働者を面談させて産業医の意見を聴いたり、人事部等に面談したりして復職後の勤務の可能性を判断することになります。

復職後の業務

復職可能とする診断書があっても、一定期間は軽作業であることや残業は不可などの条件が付されていた場合、会社は、復職前の職場に戻れないにも関わらず、珪砂号に配転して職場復帰させなければならないのかという問題がありますが、最高裁判例においては、配置される可能性が現実的に認められれば配置転換を認めて復職をさせるべきとしています。なお、この配置転換の現実的可能性には、労働者側の事情(職務限定の有無)だけでなく、会社の規模、業種なども考慮に入れて考えられます。

休職期間満了時に復職できない場合

この場合、「当然退職」になるのか、「解雇」となるのかは、就業規則の定める例によることになります。

注意点としては、30日未満の短い休職期間を定めた上で、休職期間満了時に復職しない場合退職と定めた場合には、解雇予告制度を潜脱するものとして無効となる可能性があるので、注意が必要です。

第5 労災認定

業務上の原因によるメンタルヘルスであるかの判断基準は、厚生労働省の「心理的負担による精神障害の認定基準」が参考となります。厚労省は、この認定基準において、仕事上どういったストレスがあれば労災と認めるかについての基準を定めています。

発症の概ね6ヶ月前に精神障害を発症させるおそれのある業務による強度の心理的な負荷が認められること、業務以外の心理的負荷及び個人的要因によりその精神障害が発生したと認められないことが要件となります。

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